前回までの話
組が消滅し便利屋を始めた剣次は借金の取り立てに出向き、留守宅に催促の張り紙をした。ところがその文字が朱文字で添削されてしまい、ナメられた剣次は文句つけられない字を書いてやろうと決意したが、いきなり「連」のしんにょうにつまづく。やっと書けたと思ったのも束の間、「車」の直線で手が震え、またしてもペンを粉砕してしまう。
後半に続く。
その前にペンダコ先生…
最終画縦線 糸偏が3つもあって、これ自体書く練習になりそうな言葉ですが、つまり下のような字ですね。
最後の縦画をスーッと抜くか、止めるかという問題。
今まで何も気にせず手本のまんま書いてたんですが、手本もいろいろで、結局一体どっちなんだ?
このへんで一度整理しておこうと思ったわけです。
字の正誤でいえばどっちでもいいらしいです。 漢字の書き取りや、たぶん検定の理論問題でも。
日本習字普及協会「常用漢字六体」(狩田巻山)では楷書はほぼ抜いてます。一方、二玄社「ポケット ペン字字典」(石川芳雲)では線が細くて判別しづらいんですが、明らかに抜いてる草書と比較して、止めているように見えます。
そもそも書道ではどうだったのかと二玄社「新書源」で楷書の代表的な古典を調べてみますと、孔子廟堂碑、九成宮醴泉銘はじめ、智永の千字文や顔真卿の楷書も先が尖ってます。
毛筆の二玄社「標準三体字典」(吉川蕉仙)では抜いてる方が多いですが、「新」は止めて「折」「祈」は抜く、「申」は止めて「神」は抜く、「姉」は止めて「市」は抜くなど法則性はなし。
これらを総じて見ると、手書きとしては、抜くのが基本なのかなという気がします。書道ではむしろ行書で止めてるのが結構見受けられました。
書道っぽいフォントで見ても
ほぼ抜いてますよね。
気になるのは二本足の字
個人的にはこの右の軸足?のほうは止めたいんですが、「常用漢字の六体」では全部抜いてます。上のフォントだと「算」と「耕」だけ止まってます。「研」は意外や抜いてる。「斎」は止まって「斉」は抜く、「隼」だけは止めてる…この辺は規則わかりませんね。
文字個々のイメージというのもありますからね。「車」は止めたいんだけどな~
これだけ見るともう、楷書は抜くが基本でいいんじゃないでしょうか。
じゃ何で結構止めてるイメージがあるんだろうと考えてみるとゴシックや明朝体のフォントの影響は大きいんでしょうけど、加えて横書きのせいもあるんじゃないか?
横書きでは縦に抜くと横への流れが切れてしまう。止めたほうが横へ繋げやすい…ペン字の楷書課題は横書きが多いですから、止めるイメージが強くあるのは、そのせいかもしれないですね。
結論
基本的には抜くけれど横書きが主流となりつつあるボールペン字では止めるのも大事。長さも意識して使い分けよう。
このフォントは今まで気にしたこともなかったんですけど、このまま手本にできそうでいいですね。
他のフォントでも
筆ペンの楷書手本はこれでいいんじゃないの?
無料のMediBang Paint はスマホ版もあるのでダウンロードしてテキストツールで文字入力してフォントをFOT-グレコStdにすれば、そのまま楷書の字典として使える。
今回の作例制作にあたって初めて気付いた自分の文字の欠点を矯正します。
1.まず、さんずいの書き方 2つの点が上によりすぎる癖発覚。「羊」の3本線の間隔も狭く上によりすぎる癖、上の二点の右側の線が傾きすぎ隙間がせまくなる癖、これは「新」「部」の左上、「幸」の中央部の二点でも同じ傾向が… この3点を直す。
2.だいぶ改善したと思うが、上記字典や上のフォントをみると「羊」がもう少し下。ずらしてみる。
3.「羊」の横画が長く幅が広すぎるよう 削って空いた隙間を埋めるため偏を右へズラす。
こんな感じ。どうでしょう? 下の3つは好みによるかな? ちなみに3と4は2をコピーしてのデジタル処理です。ペン字も新たな時代が来るね。
ペン字を学んで無くても字の上手い人は多いですが、この人はちゃんと勉強してるなと見分けるポイントになるのが、カンムリの書き方だと思ってんですよ。
明朝体でもそうなってますし、今更なにをと思うかもしれませんが
意外とこう書いてる人多いです。↓
「家」はちょっと開き気味に書いてしまいましたが、下パーツを挟むようにしめちゃうんですよ。かくいう私も「栄」はペン字始めるまで、ずっとこう書いてました。
そもそも「栄」がカンムリに「木」で出来てるという認識がなかった。中央部は横長の四角だと思ってた。
毛筆では、特に古典ではこう書くこともありますからね。
でもペン字の手本でこんな風に書いてるのは(断言はできないですが)まあ無いでしょうね。手元の手本でもこんな感じです。
ウカンムリ
その他のカンムリでも
途中でパーツとして使われても
ポケット ペン字字典の石川先生はまっすぐに近いんですが 他の手本では左側を開いてスペース作ってます。
前にも言いましたが、スペースができると大らかな印象になる。
締めるとシルエットが鋭角的でキツい感じになって、気のせいか心まで閉ざしてるように見えてしまう。
心もカンムリも大らかに開いちゃいましょう。
もう一つ
カンムリでは無いですが、同様にずっと書いてたのが「市」など。
これは開くというより、真っ直ぐっぽく書くことが多いようです。
引っ越しで2ヶ月まともに字書かなかったんでヨレヨレでした。
続けてやらないとダメだと再認識。
こっちのほうはしっかり締めていきます。
石川芳雲「ポケット ペン字字典」を元に非・常用漢字を書きます。
2003年版なんで、後に常用に追加された漢字や人名字も含まれます。
「挨拶」「偲」「凛」「於」「嬉」「俺」「宛」
「羨」「頃」「誰」「凄」「訃」「頓」は追加字
「聰」「毅」「暢」「艶」は人名字
「颯」「燦」「萎」「鬱」「摯」「痩」「妖」「弄」「畏」は追加。
まだ この辺は書いたことのある字が多い。
「凱」「貌」「彙」「拭」は追加字。
「蔽」「詮」「蔑」「苛」「崖」「頓」は追加。
こうなってくると、さすがに活字でしか見たことのない字が多い。
今、初めて書いた字も少なくない。
「梗」「脊」「捻」「瘍」「咽」追加
「箋」(追加)はうまく書けたことがない。
「怨」「袈裟」「檀」は追加字。
この二系は非・常用字の巣ですな。
面倒なので書かないですが、ここは追加字や人名字だらけ。
↓ちゃんと知りたい人は調べて
https://joyokanji.info/list.html?add&prev
「萌」は人名字
「狙う」(追加)は最初から常用じゃないんだね。
ペン字字典にのってない字もあります。
手書きのサンプルがあまり無いんで書くこと少ないんですが
やってみて改めて世の中、非・常用字だらけだなと再認識しました。
ここにあるのは、ほんの一部です。
これやったら非・常用字が気になりだして、気が付くたび確認してしまう。
「曖昧」「稽」「賄賂」「鍵」「捻」「醒」は追加。
「攣」は活字だと鍋蓋ないですが、ペン字字典では付いてたので書いときました。
参考資料の年代などで多少、内容にバラつきがある。
2004年版「常用漢字の六体」に出てる追加字(平成2年の追加答申)の「颯」は今
文化庁の一覧 にも出てない。
追記
「颯」人名用漢字の方で発見。人名用めちゃくちゃ多い。
下の「掬」も人名用。
ここは大半、初めて書いた字。
実際に手書きしたことない言葉って多いもんだな〜
「暗澹」は上で一度書いてました。
赤丸のついた字はペン字字典にも出てない。
「隙間」は活字では「小」だけどペン字字典では「少」。
「慇懃」は潰れて読めず、漢字筆順サイトでやっと確認。
「膠着」は上で書いてた。
「醍醐」は勿論人名字。意外や「蹄」も人名字。
手本ない字はパーツのバランスがわかんないね。